値段の割に小ぶりなスイカの入ったビニール袋の持ち手(片方ずつ)をそれぞれぶら下げて僕らは焼けつくアスファルトの道を歩いていた。 近所の衣料品店で買った安物のビーチサンダルが熱を吸収してなんだか足の裏が痒い気がする。 今年の夏はなんて猛暑なのだろう。 白いTシャツが汗を吸って肌を透かす。 纏わりつくようなそれから、少しでも逃れようとシャツの胸元をつまんでニ、三度ひっぱった僕に、彼女は可愛らしいタオルを手渡して汗を拭くよう促した。 「風邪ひくよ?」 僕は少し戸惑いながらも素直に従って額や首筋から流れ落ちる汗を拭った。 彼女は満足そうにそれを見届けて、タオルは返さなくていいよと言った。 やっぱり他人が汗を拭いたものを再び使うというのはたとえ洗濯したあとでも気持ちがいいものではないのだろう。 やはり彼女の親切を断って服の袖ででも拭いておけばよかった。 そんな気持ちが顔に出ていたのだろうか、彼女はそれを勘違いして「やっぱり男の子に仔猫のタオルなんておかしいよね」と少し困ったふうに言ったので、僕はそんなことないよと答えてズボンのポケットにタオルを捻じ込んでビニール袋の持ち手を握りなおした。 空には大きな入道雲。 二人の間にはもうすっかりぬるくなってしまっただろうスイカ。 けれどもそれが間接的に手をつないでいるようだと思ったら、なんだか途端に恥ずかしくなった。 それでも顔が熱いのは、今年の猛暑のせいだ。 暑いと呟く彼女の横顔をちらりと盗み見て、今度ネコ柄のタオルの代わりに何か贈ろうと、僕は密かに考えるのだった。 |